2013年6月18日火曜日

フランス同性婚法成立万歳

SDIM9768 by i_noriyuki
SDIM9768, a photo by i_noriyuki on Flickr.
先月、フランスで同性婚法が成立しました。喜ばしいことです。当日、教会で結婚式を挙げたカップルには心から祝福を送りたいと思います。
さて、本日朝日新聞に、中村江里子「パリからあなたへ」という連載記事に、このカップルの結婚を呪うような記事が掲載されました。サイトのアドレスはこれです。http://www.asahi.com/and_M/living/TKY201306170159.html?ref=comtop_list
 いずれこの記事は読めなくなることと思いますので、私が問題だと思う箇所を引用します。この女性はフランスに住んでいるようですが、人生初めてのデモとして、同性婚反対のデモに参加した時の感想として、次のように書きました。「家族連れが多く、切実な思いが伝わってきました。それは私にとっても同じこと……。(一部略)。フランスは同性愛者に関して寛容な国だと思います。でも……子どもにとって両親がパパ二人とかママ二人というのは、あるべき姿ではないと多くの人が思っています。」
 率直に言って、この人にとって、同性婚が切実な問題であるとは到底考えられません。自分は同性愛者ではない、家族がいる、結婚をしている、そういう人が、長い抑圧と差別のくびきをといて、やっと結婚を祝福される立場に立った人間の前に立ちはだかって、「結婚を許さない」と叫ぶのです。これは、偏見に基づいた憎悪の表明であり、最も恥ずべき行為です。
 さらに、もう一点、いろいろな事情で、子供の両親がそろわないなかで、子育てに励んでいる人々はたくさんいます。私の姉もそうでしたし、いとこも子供の父親を明らかにしていません。そういう家庭に対して、幸せに生きる道をともに分かち合うのではなく、「あるべき姿ではない」などと暴言を投げつける野蛮さは決して許せません。このような発言を掲載した朝日新聞は、偏見を扇動したものとして断罪されるべきものと思います。
 写真は、イギリスの港町ドーバーから崖伝いにハイキングをしたときの写真です。写っているのは私の連れ合いです。

追加:朝日新聞に、抗議のメールを書き送ったところ、本日次のような返事がきました。誠実な対応に、感謝します。

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日頃より朝日新聞デジタルをご利用いただき誠にありがとうございます。 
朝日新聞デジタルお客様オフィスの○○です。 

この度は、朝日新聞デジタルの収載記事につきまして、ご不快な思いを
させてしまい誠に申し訳ございませんでした。

■中村江里子 パリからあなたへ  <フランスは“デモ”と“ストライキ”の国>
 http://www.asahi.com/and_M/living/TKY201306170159.html

上記の記事では、同性愛に対する偏見を助長するような表現が
ございましたことを深くお詫び申し上げます。

なお、筆者の中村江里子氏、ならびに朝日新聞デジタル「&M編集部」より、
現在お詫びことばを掲載しております。ご確認いただけましたら幸いです。

■中村江里子 パリからあなたへ記事 <パリの美しい本屋さん>
 http://www.asahi.com/and_M/living/TKY201307100275.html

今後は十分に注意をはらって参ります。 
引き続き朝日新聞デジタルをどうぞよろしくお願いいたします。

追加の注:
書くまでもない、と思いはしたのですが念のために付け加えると、この中村江里子さんが後で書き加えたのは、そんなつもりではなかった、という、日本人がよくするいつもの言い訳です。自分が同性愛者に対して差別や迫害をしているという自覚はありません。誠実な対応、というのは、朝日の編集者が差別を認めた、という点に限ります。

2013年6月10日月曜日

名前にひかれて

Zorbas Bar, Mykonos Town by i_noriyuki
Zorbas Bar, Mykonos Town, a photo by i_noriyuki on Flickr.
この写真を撮りました。ミコノスの港にある何ということもない、入り江の隅にたつバーで、立地はいいはずだのに、見ている限りあまり繁盛しているように思えません。さて、その映画、子供の頃の思い出で、たぶん日曜名画劇場か何かで見たものと思いますが、どういう内容だったか覚えていません。「その男」という邦題から浮かんでくるのはひげ面の、しかしちょっと人を引きつけるところがある男の顔。悲しい習性で、ロンドンに帰り着いてからインターネットで検索、ギリシャ人役をしていたのはアンソニー・クインだったんですね。原題は「S」抜きの「ZORBA」。ついでにYouTubeで聞いてみたテーマ音楽が何とはなしに懐かしい。これは、やはりかつて見たことがあるに違いない、と1人自悦に浸りました。
実は、この写真を撮った日は、運悪く借りていたバイクが誰かによって駐車場の奥に移動され、使用不能、2時間の辛抱の末、道を塞いでいる車が消えるのを待ちきれずに、行き先を調べずにバスに飛び乗り、行く予定の無かった浜辺に着きました。その帰り道、ま、いっぱい引っかけて、と立ち寄ったバーはアメリカ訛りの英語を話すギリシャ人ご一行の同窓会らしき人たちが席を占め、耳を塞ぎたくなるくらいうるさい。さらに騒音とも思える音楽が掛かると、つと、中の1人が立ち上がり、女性の手を取って踊り始めました。ギリシャの踊りは、二人が手をつないで横に並び立ち何ということもないステップを踏む、あれです。映画のラストシーンと重なり、騒音もそれほど苦でなくなった、ということで一件落着。

2013年4月23日火曜日

土筆(つくし)の親戚

Horsetail by i_noriyuki
Horsetail, a photo by i_noriyuki on Flickr.
形は土筆(つくし)そのもの、味もにおいもほぼ同じ、でも近縁種だろうと思います。日本のものと比べてはるかに大柄です。
先週の日曜日、テームズを下って(本当は電車に乗って45分)Leigh on Seaという町に行ってきました。河口が三角州になって湿地帯と土手がなだらかに続いてるところ、一見すると、平和な田園地帯という感じですが、もちろんイギリスに田園はありません。湿地は耕作せずに(塩分が多くてできないか)自然公園になっています。川の対岸は火力発電所らしきものや化学工場の煙突が見えました。さらに南に下ると原子力発電所。ここら辺りの海岸は800年くらい前の城跡、そして60年前のコンクリートの塹壕址、どちらもフランスやドイツなどの隣人との仲の良さを示しているとのこと。さて、ここらで、何人亡くなったのやら。
土筆の化け物は卵とじになる予定、こちらではスギナ本体が民間療法に使われているようで、通風にも効くとか何とか、ネット情報がありました。ちょっと心配な発ガン性は書いてなかったから大丈夫かと思います。

2013年1月15日火曜日

ボヘミアン?

Musicians, Valle Gran Rey by i_noriyuki
Musicians, Valle Gran Rey, a photo by i_noriyuki on Flickr.
これも去年の12月、ゴメラ島の浜辺で見た光景です。この写真を撮った翌々日、同じ場所で座っていると、メンバーの1人がカンパを集めに来ました。この島の人口の2割はドイツ人、とのこと、風貌からも言葉遣いからもたぶんこの人たちもドイツ人でしょう。ドラムとフルート、それから何かの弦楽器で組んだ単調さが心よい演奏、毎夕、この浜で気が向いたものが集まるような緩い結びつきの人たちのようで、顔ぶれは日々少しづつ変わるようでした。周りを取り囲んでるのも、もちろん、ほぼドイツ人です。
 それで、このボヘミアンという言葉。岩波国語辞典には「世間の習慣など無視して放浪的な生活をする人。Bohemian(=ボヘミアの住民。放浪生活をするジプシーに対する称)」とあり、また明鏡には「社会の規範に縛られないで、自由奔放に放浪的な生活をする人。◇もと、ボヘミアの人の意。」とほぼコピーしたかのような定義があります。ドイツ人をボヘミア人と呼ぶのは当たりませんし、「社会規範にしばられないで」というのも本人たちに聞いたわけじゃないからどうか分かりませんが、生まれ故郷を抜け出して、よその地で定職に就かないで暮らしているという点で、「自由奔放」とか「放浪生活」という定義に少し引っかかる感じがします。正直に言うと、こういう暮らしがうらやましい。交通の便の良くないこの島に住み着くのはなぜかドイツ人、イギリス人でもイタリア人でも、まして日本人でもありません。ボヘミアの血が少し混じってるんでしょうか。


追加の注:前のポストでドイツ人は島の半分と書き、ここで人口の2割と書いたのは一貫性がない、と非難したくなると思いますが、人口の2割とは在住者のうち、ということ、観光客の過半はドイツ人ですから合計して半数を超えるというのが、自分の印象です。

なお、岩波の「世間の習慣など無視して」のほうが、語のイメージとしてしっくり聞こえる気がしませんか。「ボヘミアン」などという人たちは見たことがないし、たぶん、本当には存在しない、ということは横に置いといて。

2013年1月13日日曜日

形容語がみつからない

昨年末、カナリヤ諸島に行ってきました。この写真はテネリフ島のEl Medánoという町の一角で写したものです。広場の中ほどに日本のものとはふた味ぐらい違うモダンなすべり台が橙色と黄緑そして赤く塗られてありましたが、全く人気(ひとけ)なしです。地面は褐色のれんがで丁寧に仕上げられています。ここから浜辺までわずか100M、そこは家族連れとサーファーの声でにぎわっているだけに、異様な感じがします。落書きも小さいのが一つだけ。写真をよく眺めてみると、取り囲む建物は入り口が見当たらない、つまりここはホテルの裏側に面しているということになります。
 そこで、この広場をどう表そうかと考えてみたのですが、うまい言葉が見つかりません。Flickrには'Deserted Play Ground'と載せましたが、その訳語の「うらさびれた」とか「見捨てられた」というような日本語はないなあ、と思うし、「凄(すご)い」というのは、ぞっとするような違和感は押さえているものの、恐ろしい感じとまではいかない、ということで却下。先に「人気(ひとけ)がない」と書きましたが、それはそれだけのことで、ここにいるはずの子供の声が聞こえない、ということからくる当惑はあらわせません。はてさて、困った。どなたか分かる人、教えてください。
 なお、ここはテネリフ島でも古手の観光地、とはいうものの、町に外国人の姿は目立つことなく、スペイン人で占められていました。ここにくる前に10日間ほど泊まってきたLa Gomera島が半分ドイツ人(のボヘミアンらしき人々)の町になっているのと対照的で、なんとなしに少しほっとしました。

追加:
福島原発の汚染地域を見に行った人の文章の中に次の句がありました。小学校の運動場を写した写真についていた言葉です。

本来子供たちがいるはずのところに、誰もいないのは、恐ろしい。

2012年12月3日月曜日

観光する???

Police van? by i_noriyuki
Police van?, a photo by i_noriyuki on Flickr.
ここのところ、観光づいていて、先月半ばにカンタベリー、そしてこの週末ウィンザーに行ってきました。初めてでしたので、これで私も立派な日本人になれたか、と喜んでいます。さて、カンタベリーの方はそこそこに古い建物が残っていて、街を歩いても見るものがありましたが、昨日のウィンザーはお城は17ポンドかかるというので入らず、町はオックスフォードストリートにある店のようなものしかない、早々に本来の目的である森歩き、川端歩きに向かいました。そこで見かけたのがこれ、いかめしく鉄格子が中にあるところを見ると、護送車か何かに使われたものでしょうか。中に入ってみなかったのは悔やまれました。
 ところで、この「観光」ですが、自分が使っている日本語の教科書に「ちょっと、観光しない?」という会話が出てきます。はて、これはおしゃれめいて使ったのか、もうそういう複合動詞ができてるのかな、と思い、いろいろ辞典を見ましたが、出ていない。いや、英辞郎にはちゃんとありました。私の個人的な感覚では、「観光」のように「-を」を二つ使う必要がない名詞の場合は、あえて一語にする必要がないというのが主な理由じゃないか、と勝手に思い込んでいるんですが、この、「する」がくっついた複合動詞というのはけっこう厄介なもののようで、探してみると、まさかこんなものに、と思われるような意外な組み合わせがけっこう見つかるんだそうです。日本国語大辞典(第2版)の編輯の中心、松井栄一がそのようなことを辞典作りの苦労話の本で書いていました。そういうことで、日本語教科書に載ってるんだから、そろそろ国語辞典にも載せてもいいんではないか、と思いますがいかがでしょうか。

2012年11月14日水曜日

「ある意味」の意味はありやなしや

Gray's Inn Road by i_noriyuki
Gray's Inn Road, a photo by i_noriyuki on Flickr.
今回も、この頃のネットの書き込みによく使われる言葉のシリーズです。前に触れた「しつかん」のお仲間で、自分の判断を開帳する際に、飾りなしに、言い切ってもいいところを、一呼吸おいて、「ある意味、何とかかんとか…」とやるわけです。その「ある意味」とは何か、というのは聞かないほうがいいんです。どうしてか、というと答えが返ってくるはずがないからで、「ある意味」の意味には中身がない、ないけれど、書き手からすると、「言葉に表されているよりは、少し深い意味で考えているんですよ」、というアピールとして働くし、書き間違いをした場合でも、「その語の意味を全面的に認めて使ったんじゃない」という言い訳もできる。まことに結構な言葉、ということでしょうか。と、ここまで書いて、思いつきました。いっそこれを「無い意味」というのにしたらどうか、という提案です。その方が正直でいいと思うんだけどなあ。自分でさっそく実践しようかな。
 この日曜日は、またぞろ新しく入手したレンズの試し撮りをしに行きました。バス停で待つ間、向かいにある店の跡を写しました。このご時世、窓の閉店セールの跡も、まだ残っていました。