2009年1月16日金曜日

「だ」と「で」と「に」

 日本語オンラインというサイトに文法についての投稿をしました。年末から年明けに何回か。そこで考えたことが、すっきりしなかったので何冊か本を読み直すことにしました。「日本語形態論」(城田俊)、「ボクハ ウナギダ」の文法(奥津敬一郎)ほかで、そこに書いてあったことが、先の投稿の際に考えたことと重なっていたのでメモをします。これはたんに、前に読んだことが頭の隅にあったというだけかもしれませんが。

 いわゆる助動詞の「だ」(指定とか断定のそれと呼ばれている)と、格助詞とされる「で」についてです。投稿した件は、次のような、接客業の場で最近よく聞かれるようになった表現に関するものでした。

 「ロイヤルミルクティーでお待ちの客様!」

 問題は、「ロイヤルミルクティーで」ではなくて、「ロイヤルミルクティーを」なら、「待つ」との論理的な関係が理解できるが、どうして「で」が使われているか、その意味は何か、という問題でした。その場の結論的なものは、「格助詞『で』」の用法中、「様態」ないし、「目的・理由」を表すものだ、というのでした。
 しかし、この「様態」とか「目的・理由」などと呼ばれるものがはたして動詞と結びつく「格」と呼んでいいのか、というのが疑問であって、そうではなくてこれはいわゆる「助動詞」の「だ」(ただしくは体言述語を作る助辞)の「連用形」(正しくはて形接続形)と考えるのがよい、というのが僕の意見です。これは、「ウナギ文」と業界で呼ばれているタイプの文で、次のような解釈の文の動詞(太字部分)が「だ」に置き換えられたものということです。

 「ロイヤルミルクティーを注文して、できあがりをお待ちのお客様!」

 問題となるのは、学校文法、およびその亜流の文法(日本語を教えている人たちの大半がそう)では、「だ」の「連用形」は並列構文を作る場合と「で・ある」「で・ない」のように「ある/ない」に続くもののみとしていて、接続形を認めていないことにあります。しかし、次のような文の「で」は、どう考えても「だ」の意味とはたらきを持っています。

 今年も、健康でお過ごしください。 ←今年も健康だ。
 病気で仕事を休んだ。 ←病気だ。

 接続助詞「て」を使った形式は、並列構造だけでなく、様態(「ながら」に近い付帯状況)継起的な接続、理由や目的、さらに「ている」の形その他、もっと密接な関係のものまで大変に広い領域の意味を表します。同じようなことがこの「だ」起源の「で」でもあると考えるの自然だと思うのに、そうじゃない、決めつける人がいる。困ったことです。
 ここまでが、本を読む前の考えでした。本を読んで教えてもらったことは次回に。

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