2013年12月9日月曜日

背中を押さないで

Pont De Pierre by i_noriyuki
Pont De Pierre, a photo by i_noriyuki on Flickr.
 当世、自分で自分のことを決めるのが億劫になったのか、この「背中を押す」というのがずいぶんとはやりの言葉になっています。何か重要な転機に、誰かの助言を得たとか、他人の勧めに従ったら、それまでに予想もしなかったおもしろい変化が生じたとか、はては、高い買い物を決断するにしきれないから、踏み切るためのあと一押しが欲しいとか、迷える子羊にとって、この「背中を押し」てくれる人たちというのはまことにありがたい存在である、ということなのでしょう。
 でも、川端で背中を押されたら、水の中に落ちてしまいます。駅のホームで一押しされたら、怖いことになるなとぞっとしますが、世の中、何でも一押し欲しい人がいっぱいのようです。押す側の立場に立って考えれば、自分のことは知らず、他人が押して欲しがってるんだから、そのお手伝いをするのは決して悪いことじゃない、ということなんでしょうか、自分の財布は傷まないし。でも、自分で決められることを自分で決められないというのはみっともないことだと思わないんだろうか、などと、いらぬ心配をしていまいます。ままならない世の中、せめて、自分で選んだんことには、文句は言うまいと思いたい、という、悲しいあきらめの心情の反映です。何にしても、そういうのを書き物に書くのは、みっともないから、もう止めよう、と言いたい、お願いだから。
 写真は十一月に訪れたボルドーの川岸です。朝、霧が立って、川面を覆い、水面近くを水鳥が横切っていました。